もうひとつのゲド

◆娘が洋書の多読学習を始めたのに刺激され、私も洋書を久々に読むことに。”Annals of the Western Shore” ル・グインの「西のはての年代記」シリーズ2作目、Voices.

Voices (Annals of the Western Shore)

Voices (Annals of the Western Shore)

◆これが結構面白い。あわてて1作目のGiftも購入(こちらは和書)。Giftを読んだ限りではもう一つのゲドだなと感じるが、ゲドよりも陰惨・陰鬱なイメージは少なく(十分に寒く・暗いけど)、Voicesはむしろ明るく華やかなイメージすら感じる。まだ途中だけど、このシリーズはよいかも。


◆西のはての年代記シリーズ第1作「ギフト」

ギフト (西のはての年代記 (1))

ギフト (西のはての年代記 (1))

◆高地にすむ一族はそれぞれに生まれつき与えられた力(ギフト)がある。ある一族は動物と心を通わせることができる能力、ある一族は一瞥ですべてを破壊する”もどし”の力を持つ。主人公はこの”もどし(原文はunmaking)”の力をもつ一族の力の後継者として生まれる。同じくもどしのギフトをもつ父によって、ギフトに支配されることを防ぐために目隠しをされた主人公の成長譚。寒く貧しい土地に生きる部族間の卑しい争いに、寡黙に戦う主人公の父、父の支配を受けつつ、抗う主人公、と、ゲドを思い起こさせる箇所が随所にある。一方で、明るく伸びやかで主人公に文字を教え、書を読むことを教える母の存在や、動物と心を通わせるギフトを持つおさななじみの娘との心のふれあいなど、ゲドにはない、明るさがある。シリーズ1作目として、よい滑り出し。