生前葬に出席する 2

◆先生の挨拶で会がはじまる。
7月下旬にみぞおちに異物感があり、病院で検査を行う。
いくつかの検査を経た後、肝臓癌と診断が下る。

癌を切除すれば、余命3年から4年。
このまま放置すれば、半年から1年の余命。

いずれを選ぶかを数時間で選択して欲しいと告げられる。

奥様と相談すること3時間、最終的に先生が選んだのは、
1 切除しない
2 できるだけ長く家で過ごす
3 一切の延命処置をしない
だった。
ターミナルケア終末医療)を引き受けてくださる病院を家のそばに確保し、
ひとまず落ち着く。


◆先生が僧侶になって15年が経過した。
この間、多くの死に立会いながら、自分が死を宣告された時に
どのような思いをするだろうかと考えていたという。
実際にガン告知を受け、思いのほか、動揺せず、心穏やかだったという。

まず感じたのは62年も生きてきて、充実した人生だったということ、
次に感じたのは、死ぬ前に今まで出会った人たちにお礼を伝えたいということ
その次に感じたのは、場を設けるのであれば、死んだ後で葬式に参列するために
再度集まってもらうことも申し訳ない、いっそ生前葬という形にしよう
ということだったそうだ。
こうして生前葬が計画された。

招待客への通知が終わったあとで、小さな手術が行われた
肝臓癌には癌の破裂、食道静脈瘤の破裂などにより
病状が急変することがあるという。
これへの対処をあらかじめしておこうというもののようだ。
都合、2週間ほどの入院をしたが、
体力を消耗したのか、回復に時間がかかり
退院から2週間ほどたった今も腹部に力が入りにくく、
大きな声がでない。
とはいえ、体力や体に差し障りはあるものの、
気持は穏やかで晴れやかでさえある。


こうして、先生の挨拶は、
病状の説明から出席者へのお礼を最後にして終わり、
料理が運ばれてきた。