メゾン・ファタール その1

Catalyst2008-08-01

ファム・ファタールとは、「運命の女」。男性は、いったんその女性と出会うと、魅力に抗うことができず、振り回されてしまい、時に身の破滅をももたらすという魅力的な女性のこと。メゾン・ファタールとは、その家版。そんな家に出会ってしまいました。


◆山手線駅から私鉄で数分、名の知れた住宅街ではないが、実はしっかりした家が立ち並ぶエリア。古くからの大きな邸宅が並ぶ地域で利便性もいいので住人が代々住み続けるのでまとまった土地もでず、結果、マンションが少ないエリアになっている。駅前から続く商業地域の端に出たまとまった土地に大手不動産会社が新築マンションを建てた。メゾンファタールはそのマンションの最上階ペントハウス。80平米ほどの2LDK。広くもないし、間取りも良くない。洋室2室のうち1室はリビングからしか入れない。洋室間の間仕切りも遮音性は低い。しかし、18畳ほどのリビングはワイドスパンで住宅街が一望できる。建っている土地が商業地域と第一種低層エリアの境になるため、洋室からは都心が一望できる。リビングの天井が一部、3メートルという天井高になっている点も気にいった。なんといってもペントハウスであることが良かった。


◆もともと我が家がそのマンションを見に行った理由は予算的に折り合いがつく下の階の部屋。最上階に1軒だけのペントハウスは予算よりも3000万以上も高かった。「ま、資金がたっぷりあれば、こんな物件も手にはいるという見本で、今後の働く励みのために見てみるか」という軽い気持ちでペントハウスを見た。そして家族3人ともに魅せられてしまった。


◆この家を買うには我が家の総資産すべてを投入しないといけない。それはさすがに無理、残念だけど・・・と思っていたところに、物件が1000万円値下げ。さらに我が家の資産の半分を占める非公開社員持ち株の株価値上げの噂も・・・。総資産マイナス物件価格でおつりが出る状態になった。買えるけれども買ったら大きなリスクを抱えるだろう、でも欲しい、でも危ない。私の心はきりもみ状態。


◆はずれたらあきらめられるし・・と思いつつ申し込んだ抽選も当たってしまった。いよいよ進退窮まる。夫と二人で夜毎相談。家族全員が好きな家だから相場よりも高くてもかまわない。好きな家だけに、買った後であんな家具も、こんな家具も入れよう夢が膨らむ。しかしその後の生活をどう考えるか。多少でもローンを組むほうが安全だがそうなると老後の蓄えが一気にしぼむ。担当営業からは強い押し。夫と二人で、FACT整理し、物件総額、引越し、新しい家具購入費用など諸費用を洗い出し、毎月の生活費用と組み合わせて月ごとの収支シミュレーションを立てた。たとえ少額でも借金をした時としない時の生活や今後の資金の差は歴然。結果、購入を辞退することに。ようやく1件落着。きりもみ状態だった私の心もようやく平穏になった。