恩師その後4

◆恩師の状態があまりよくないようだ。
携帯にメールをしたところ、「昨日は体調が悪く、つらく苦しかった。が、しかたのないこと」との返事が来る。あと半年と言われたのが1月。あと1ヶ月すこしでその期限がくる。


◆先生は漱石の「思い出すこと」の中で、瀕死の境から戻ってきた漱石が自然や社会と自分との間に一定の距離を感じつつ眺めているのが面白いという。自分も同じように透明の壁の向こうに風景を見るという。私にはそれは静かで澄んだ冷ややかな世界のように思える。


◆週末に散歩をしていたら満開のつつじを見かけた。
ピンクの花の中にうずもれるように新緑が顔を覗かせる。花も緑も蛍光塗料を混ぜたような色で、見ているだけで痛くなる。香りはといえば、鈍く荒々しい香りで、まるで拳骨で殴られているようだ。花も新緑も「生」は粗野で強く荒々しい。どんな人でも敵わないなとしみじみ思う。