新人君たちへ

◆新人も入り、1年下の学生君たちは就職活動で忙しい頃。街のあちこちでスーツがなじまない若者を見かける。今日も帰りのグリーン車リクルートスーツの女性が”経済早分かり本”を読んでいた。お嬢さん、早分かりで分かることはなかなか身につかないよ。新聞をちゃんと読むことと、身銭を切って経済の中に巻き込まれて、景気の良し悪しを体感することが一番大事。がんばってね


◆会社の中でも新旧が入れ替わる。
4月の人事異動で昇進した人が幹部会議に参加する。新しく幹部会議メンバーになった人と、従来からのメンバーとの関係が面白い。幹部会議の同じメンバーとはいえ、平メンバーと役員とでは、役職的には当然のことながら役員のほうが上。昇進が遅く、ようやく平メンバーになった人がいる一方で、若くして昇進し、入社年次が若いにもかかわらず役員になった人もいる。いわゆる役職と年次の逆転。幹部会議での彼らの会話を聞くともなく聞いていると、これが微妙で、年次が上である新メンバーが、従前からメンバーである若手役員に対して先輩口調で話をしている。役員は人柄もあって、さほど抵抗もしめさず丁寧な口調で答えている。いやはや。


◆入社年次通りに出世することは、もはや、ありえなくなってきている。年上の部下を持つケースも多い。年下の上司と年上の部下、どちらが口調に気をつけるかというと、年下の上司だ。一般的に、年上の部下に対して、年下の上司が丁寧な言葉で話すことが多い。一方、年下の部下はというと、年下である上司に対して横柄な口調で話す人も多い。実際の組織図での上下とは関係なく、それまでの先輩−後輩の関係性が優位に働くようだ。昇進が遅く、追い抜かされてしまった年上の部下のコンプレックスなのか、強がりなのか。どうも見え透いていて、こっけいというか、哀れだと思う。


◆乱暴に言うと、このように年下の上司に対して乱暴な口調でものをいうことでプライドを守ろうとするのは男性が多いように思う。女性は、年下にマネジメントされることや、実力がない上司にマネジメントされることになれているせいか、上司が年下であれ、無能であれ、口調や対応を変えることは少ない。そんなことをしたら、一気に排除されることを知っているからだろう。


◆昔、私が新入社員だったころ、女性のマネジャーが教えてくれたことがある。
「先輩に対して丁寧な言葉を使うのは当然だけど、自分の後輩に対しても丁寧な言葉で話しなさい。まかり間違っても後輩を呼び捨てにしてはいけない。なぜならば、実力次第で2-3年後輩の人があなたを追い越すことはいくらでもある。しかもあなたや私のように女性の場合は、昇進に差がでることもよくあること。いったん、名前を呼び捨てにしたり、先輩口調で話すと、いつかその後輩があなたの上司になった時にお互いがとても気まずくなるし、会話もギクシャクしてしまうだろう。今まで呼び捨てにしていた相手を、自分の上司になったからといって、さんづけで呼ぶのは心理的に努力が必要だろう。相手も嫌な気がするし、気が重いもの。それが高じて、あなたを排除するかもしれない。だから、そんなことにならないように、上にも下にも丁寧な口調で対応しなさい。」
なんと賢明なアドバイスであったことかと思う。
新人君たちへ、新たな門出に対して同じ言葉を贈ります。
当時と比較して、今は男性だって年下が上司になることはいくらでもあります。どうぞ、賢明にサラリーマン人生を生き抜いてください。