ゲド戦記の突っ込みどころ
◆とはいえ、ゲド戦記には突っ込みどころが満載。
- アレンはなぜ父親殺しをしたのか 父が立派で自分はろくでなしでという台詞や、父に殺されるという台詞はあるものの、背景はなにも描かれない
- 父は本当に死んだのか?それも不明
- 父から魔法の刀を奪ったのはなぜ?必然性が見えない
- 魔法の刀はなぜ抜けたのか?影と合体することで抜けるのならばわかるのだけど、なぜあのタイミングで抜けたの?
- なぜ影をだしたのか?ゲド1巻に触れる必要はあったのだろうか
- テナーを出す意味はなんだろうか?なぜ、2巻の墓所の話を出す必要があったのか?
- そもそも、なぜあの女性を出す必要があったのか、なぜそれがテナーでなければならなかったのか
- テルーも同じ。ゲド戦記を総まとめしてダイジェスト版にしなければと思ったのだろうけど、中途半端だと思う
◆総じて言うならば、ゲドを通して何を描くのかのツメが甘いように思う。監督が描きたかったものがアレンの自立であるならば、ゲド第3巻ではなかったのではないかと思う。影との戦いのほうが、個人の内部と向き合い自立していく若々しい葛藤が描かれている。父との戦いであるならば、そもそもがゲドではないだろう。父親殺しというテーマはとても象徴的で多くの本で取り上げられるモチーフだが、殺したこと以上のものは映画の中では描かれていない。監督にとって殺せばよかっただけなのか?そもそも殺してもいないのか?テーマが絞りきれていないので、そこからの飛躍も発展も見出せなかった映画だ。
◆絵柄・構図も同じく、不満が残る。町並みも悪くはないが、構造がうすっぺらい。魔法が思い出せない魔法使いのいる町は、本の中ではもっと怖かった。全体に構図が単純で浮遊感、解放感がない。また、町だけでなく、映画全体に薄っぺらく、厚みにかける。
◆映画で描く世界がとても小さく、最終的には家族の映画になっていました。