メゾン・ファタール その3

Catalyst2008-08-03

ファム・ファタールとは、「運命の女」。男性は、いったんその女性と出会うと、魅力に抗うことができず、振り回されてしまい、時に身の破滅をももたらすという魅力的な女性のこと。メゾン・ファタールとは、その家版。そんな家に出会ってしまって心痛めた話の続き。


◆抽選1位に当たるも、資金計算をした結果、購入を断念して営業に伝えて1件落着、のはずが次の購入者もためらったのか「価格が問題なら・・・」と営業からの電話。悪魔のささやきに心乱れて条件を提示するものの、交渉決裂。次の購入者が契約することとなった。契約済みのマークがついたメゾン・ファタールを見ながら私の心によぎるものはなんだったか。メゾン・ファタールの顛末。


◆家を買うときに、「予算内で買える最良の物件は何か」と考えている間はいいが、「この家を買うため予算をどう組むか」と考えるようになりだしたら危険信号、という言葉があるらしい。この物件を検討していた時の私はまさにそれ。総資産はわかっていても、そのうちのどれだけを家に使うのか、老後の資金はいくら必要か、一時的に少額でもローンをくんだとたんに生活がどう変わるのか、そもそも毎月いくらお金を使っているのか等、具体的な数値も押さえないままに気持ちが盛り上がったり、不安に心が揺れたり。


◆そんな我が家の意識を切り替えてくれたのが、この物件の検討過程で出会ったファイナンシャルプランナー。大手銀行の名前だけファイナンシャルプランナーと違って、新興保険会社所属の彼は、我が家の家族構成、諸経費額などをヒアリングしながら老後までの毎月の費用を試算。いくらの家を購入したらどうなるかというシミュレーションを行ってくれた。さらに、「営業には秘密ですよ」といいつつ、この物件が相場よりも高いと思うこと、中古物件も含めて探すといいこと、中古物件の賢い探し方、借金をしないで購入するならいくらまでの物件にするべし、と教えてくれた。彼との出会いで我が家の家探しは大きく前進した。夫と二人でシミュレーションを立てることができたのも、彼のおかげ。


◆まず、借金は1円たりともしないと決めた。次に中古も視野に入れた。老後の資金、今後の生活資金も計算して、新築ならこの額まで、中古ならこの金額までと上限を決めた。と、偉そうに書くほどのこともなく、普通に家を探す人はこんなことをしているのだろうなぁ。でも我が家はこの物件のおかげでしっかり目覚めた(というか、ようやく寝ぼけがとれたというべきでしょう)


◆その後、紆余曲折を経て、いかにも我が家好みの築浅物件と出会い、めでたく契約。契約を終えて家族と祝杯をあげつつサイトを何気なしにのぞいてみると・・・なんと、メゾン・ファタールが売り物件に出ている。次の購入者のローンが実行されなかったのだろう。キャンセル物件になっていた。これを見た私たち家族は何を感じたか?互いに顔を見合わせたが、口をそろえて「(契約した)家のほうが断然いいね♪」。こうして我が家はメゾン・ファタールに翻弄されつつも破滅することなく生還した。