卒業おめでとう

Catalyst2008-03-24

◆うちの会社では退職を「卒業」と呼ぶ。今月末にひとりのメンバーが卒業する。彼女は新卒である会社に入社、2年後にうちの会社に契約社員として転職し13年間、主に総務業務を担当してくれていた。ある種の総務業務はいわゆる定常業務が中心になる。決まったことをきちんと行うことで当たり前、突発事項に対応し、常に従業員に対してホスピタリティをもってサービス提供することを求められる。彼女が担当していた業務はまさしくその類。決して派手なところはないが、常に彼女はにこやかに、こぼれだまを拾いあげ、対応してくれていた。


◆とはいえ、そんな彼女にもビジネス環境の変化は訪れる。今のままではこの先は通用しない、どうするのか、どうしたいのかを問う立場に私はいた。彼女の上司になって1年半。3ヶ月に一度の面談で、和やかに、時に詰めつつ話をしていた。10年以上も同じ業務を担っていただき、それ以上を求められなかった彼女に「何をしたいのか」を問うというのは、上司としても気が咎める。私は彼女に何を支援することができるのかと思うことも多かった。私にできることは、彼女の話を聞き、彼女が自分のことを考えることを手伝うことだろうと思っていた。


◆昨年4月に彼女と話した時、一生の仕事として調理士はどうかなと思っていると彼女が話した。話を聞くうちに彼女が真剣に考えていることがわかった。いつトライするのかと聞くと、まだ決めてないという彼女に、本当にしたいことなら迷わず踏み込んではどうか?と話し、GWにゆっくり考えてはどうかと伝えた。GW明けに、彼女から「決めました」と言われた。「決めました」と話す彼女の表情は、今まで見たこともないほど「スッキリ」していて日ごろの柔和な表情とは異なっていた。「ああ、一生の決断をしたんだな」とわかった。そこからの彼女は一切迷わなかった。通う学校も決まっていなかったにも関わらず、一切の迷いもブレも感じさせなかった。学校にも合格し、4月には入学。いよいよ新しいスタートを切る。


◆人生のなかで本当に大事な事を決断した瞬間を、私は見たのだろうと思う。彼女はかっこよかった。Rちゃん、本当におめでとう。この決断はきっと大正解だと思うし、大正解にしてほしい。これからも応援しているよ。卒業おめでとう、そして、入学おめでとう、心からお祝いします。