森見本の正しい読み方

◆もうひとつ流行っているのが「森見本」。森見作品がベストセラーであることは言うまでもないが、MLでの流行り方は森見本そのものというよりも、「森見本を正しく読む順番」の話題。
森見本には、「いちびり系」と「妖し系」がある。で、そのどちらから読むのが森見本を抵抗なく読みすすめて味わうことができるか、また同じ「いちびり系」でも度数の高い「四畳半」から入るべきか、はたまた度数の低い「乙女」から入って徐々に体を慣らしたほうがよいのか、という話だ。念の入ったことに、森見本を読了したガイドなる者が出てきて、


「あなたならば、妖し系の「きつね」から入って、妖し系の残り香がある「メロス」に行き、それから「乙女」でイチビリへの抵抗をつけ、そして「太陽の塔」にのぞむ。で、それもOKだったら「四畳半」に行くという道順ではないだろうか」


と、高説をのたまわっている。
当然、人によって趣味は異なるのだけど、高校の同級生なので大よその性格は分かっている、とガイドは決め付けている。(おいおい、30年の間に成長はしてないのか)


◆ガイドに相談をもちかけることもなく、自力で森見本を選び、「きつね」の次に「太陽の塔」と、一気に駆けのぼり「きつねは良かったんだけど、太陽の塔で大敗。私、森見はダメかも・・・」となってしまった人もおり、ガイドから「それは無謀というもの」とたしなめられる場面も。さらには、「私は何から読めばいい?」とガイドに聞く人もでてきて、ガイドは結構忙しい。(数名いるガイドのうちの一人が私)


◆ガイドにも複数の流派がある。「イチビリ派」と「妖し派」などが、初心者を自分の好きな流派へと誘導しようともくろんでいる。さらに新種のガイドとして「京都町名派」も出てきそうな気配だ。もとよりこのMLには森見と同じ大学を卒業した人が多いので、

「君は○学部で××町に下宿してたらから、××町や△△町が出てくる「乙女」がいいんじゃない」

と、登場する町名で読むべき本を決める輩のことだ(こんな読み方でいいのか?森見)。


◆要するに我々は森見で遊んでいる。
こんなことで遊べるのも、正統幻想文学である「きつねのはなし」と「太陽の塔」に始まるイチビリ系(「四畳半」「乙女」)と、森見の幅が広いことの証でしょう。最新作「有頂天家族」はイチビリ度が程よく抑えられており、なるほど広範囲に売れる本だなと感じさせる。有頂天は3部作とのことだが、徐々に森見濃度が薄れていくのかなぁ。「イチビリ」も「妖し」も「京都町名」も色濃く残して欲しいと、ガイドは思っている。

有頂天家族

有頂天家族