春の祭典

Catalyst2008-10-19

◆ハイビジョン日曜シネマで『ベルリン・フィルと子どもたち』を見る。ベルリンフィルの指揮者サイモン・ラトルが考え出した教育プログラムで、難民や貧しい家庭の子どもたちがベルリンフィルの演奏にあわせて『春の祭典』に挑戦するというもの、振り付けはロイストン・マルドゥーム。何事にも自信がなく、浅い関係性の友人たちと連なることで不安を紛らわせ、常にクスクス笑いや、おふざけが絶えない子どもたちが、やがて、レッスンを通して自信を身につけていく。子どもたちの成長にも興味をいだいたが、この子どもたちのレッスンと並行して撮影されるベルリンフィルのリハーサル中のサイモン・ラトルに感銘を受けた。


◆さらに、子どもたちにレッスンを行うロイストン・マルドゥームの言葉にも感銘を受けた。
「レッスンでは私語をつつしむ。それはなぜか?君たちはダンスで自身の肉体を通して感情を発露させる、口から感情を出すのではない」「君たちは気がついていないだろうが、君たちのクスクス笑いには『恐れ』が隠されている」「君たちが何かに挑戦して失敗するのを友人が見て笑ったら、その人は本当に君の友人だろうか。人は常に何かに挑戦し続けるものであり、友はその背中を押す人だ」といったフレーズや、その人の内面が体の動きに現れるという言葉など、深いものを感じる。


◆主役級で登場する3人の子どもたちも非常にいい。どうしようもなさそうな落ちこぼれの女の子や、神経質で他人と物理的な接触ができない男の子、政変で両親を殺され16歳でドイツに来た男の子。彼らが、時に斜に構えつつもレッスンで自分自身を発見していく様子が描かれている。


◆いずれも自身に内在するものを「表現」しようとしている点が共通している。久々にいいものを見た。

ハイビジョン日曜シネマ ベルリン・フィルと子どもたち 2004年・ドイツ RHYTHM IS IT
10月19日(日) 午後9:00〜10:46

名門ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者、サイモン・ラトルが「クラシックの楽しさを感じてもらいたい」と考え出した教育プロジェクトを記録したドキュメンタリー映画。出身国や文化の異なる250人の子供たちが、ベルリン・フィルの演奏に合わせバレエ《春の祭典》に挑戦する。クラシックに無縁で、最初は不満げだった子供たちがレッスンを重ね成長する過程を追っていく。

<作品情報>
(原題:RHYTHM IS IT)
〔製作〕ウヴェ・ディレクス、アンドレア・ティロ
〔製作・監督〕トマス・グルベ
〔監督〕エンリケ・サンチェス・ランチ
〔撮影〕レネ・ダメ、マルクス・ウィンターバウアー
〔音楽〕イーゴリ・ストラヴィンスキー
〔出演〕サイモン・ラトルロイストン・マルドゥーム、スザンナ・ブロートン ほか
(2004年・ドイツ)〔英語・ドイツ語/字幕スーパー/カラー/レターボックス・サイズ〕