プレゼントを贈るということについて

◆クリスマスが近づくと思い出すことがある。昔、最初にNYに住んでいた頃、NYUの語学クラスに通っていた。教師はイギリス人、生徒はエジプト、イスラエル、オランダ領キュラソー、トルコ、韓国、中国、台湾、日本。クラス25人の中で日本人は二人。


◆ある冬の日、イギリス人の先生が話をした。寒い休日、先生がマクドナルドに行くと、ホームレスと思われる老人が一つだけ買ったハンバーガーを大切そうにすこしずつ食べていた。先生はそれを見て、店を出るときに暖かいコーヒーを買い、彼のそばによってコーヒーをテーブルにそっと置いて店を出た。彼は驚きつつもとても嬉しそうにコーヒーカップを抱えていたという。


◆この話を聞いた生徒の反応は二分された。アジア系の生徒は私も含めて人にものをあげることは、時によって相手に失礼になるのではないかと言う。一方、非アジア系の生徒たちは、イギリス人の先生の行為は人として当然のことであり良い行いだと言う。プレゼントを贈ることが相手に失礼になるかもしれないという感情は、イギリス人のリン先生には新鮮だったようだ。


◆あれから20年近くが過ぎた。クリスマス礼拝で話をするという娘にこの話をした。娘は人にプレゼントを贈ることにためらいを感じるという。相手に怒られるのではないかと不安になるという。娘よ、あなたが感じるためらいは、正しいのだと思う。私もそう思う。でもね、今はこう思うよ。ためらいを感じた上で、そのためらいを越えて、人に何かを贈ることも時に大切ではないかと。


◆ミッションスクールに通う彼女は、毎週お小遣いから献金をし、感謝祭にはリンゴとみかんを贈り、クリスマスには学校から施設に送るプレゼントをもって行く。形のあるものだけがプレゼントではない。こんにちはの挨拶だったり、笑顔だったり、あなたが持っているものが相手を幸せにしたり、うれしく感じたり、助けになることがあるもの。形の無いものこそ、人に贈りなさい。クリスマスだもの、あなたのためらいや不安の壁を取り除いてくれるよ。